頭のかたち外来
頭のかたち外来
抱っこしているときや入浴時など、ふとした瞬間に「うちの子、頭の形が少し歪んでいるかも…」と感じたことはありませんか?
赤ちゃんの頭蓋骨は非常に柔らかく、生まれた後の姿勢や寝かせる向きによって形が変わりやすい性質を持っています。一方で、「成長すれば自然に丸くなるの?」「いつまでに相談すればいい?」といった疑問を持ちながらも、受診すべきか迷われるご家族は非常に多くいらっしゃいます。
当院の「頭のかたち外来」は、「まずは相談だけしてみたい」という段階での受診を大歓迎しています。
治療を強制することは一切ありません。医学的な客観データとご家族のお気持ちに寄り添い、納得のいく判断ができるようサポートいたします。

近年、乳幼児の頭の歪みに関する相談が非常に増えています。その大きな要因となっているのが、1990年代から世界中で推奨されている「あおむけ寝(仰向け寝)」の習慣化です。
SIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐために「仰向け寝」を徹底することは、赤ちゃんの命を守る上で欠かせません。その一方で、同じ位置で後頭部や側頭部に持続的な圧力がかかるため、絶壁(短頭)や左右非対称(斜頭)といった位置的頭蓋変形が生じやすくなっています。
仰向け寝の安全性は確保しつつ、日中の過ごし方やポジショニング(体位調整)に工夫を取り入れることが、現代の赤ちゃんの頭形ケアにおいて大切です。
頭の形に関してご家族が心配されるポイントについて、医学的な事実と日常での影響を整理してお伝えします。
「頭の形が悪いと脳の発達に響くのでは」と心配される方が多いですが、一般的な位置的変形が脳の成長や精神発達に悪影響を与えることはないとされています。この点につきましてはご安心ください。
左右非対称の斜頭症では、頭蓋底の非対称に伴って左右の耳の位置が前後にずれることがよく見られます。将来起こる合併症というよりも、頭蓋骨の底の歪みに伴って乳児期から生じる頭の形の歪みそのもの(形態的特徴)です。これにより、将来的にメガネやサングラスがかけづらい・調整しにくいといった日常生活上の不都合につながることがあります。成長とともに多くは自然改善しますが、重度のまま一部残るケースもあることがこれまでの研究で示されています。そして、耳のズレが残った場合、ヘルメット治療による改善効果が高いことが研究で示されています。
歪みによって下顎の非対称や切端咬合などの噛み合わせに影響が出ることが研究で示されており、将来的に歯科矯正が必要になる頻度が高くなる可能性が指摘されています。
一部で「頭の歪みが将来の慢性頭痛、中耳炎、顎関節症、肩こりを引き起こす」と言われることがありますが、現時点の医療データ・主要な研究において、これらを直接引き起こす(因果関係がある)という確立されたエビデンスはありません。
頭痛・片頭痛
片頭痛などの合併症を疑う意見はあるものの、これまでの追跡研究や論文では、研究データの集め方に偏り(選択バイアス)があり、「頭の歪みが原因で将来の慢性頭痛・片頭痛が増える」という科学的な根拠は現時点では示されていません。
中耳炎・顎関節症
構造的に耳管の排液や顎の位置に影響を与えるという仮説はあるものの、「頭の歪みが原因で中耳炎や顎関節症が増える」という科学的根拠は現時点では示されていません。
肩こり・首の可動域
首の動きの偏り(可動域制限)が一緒に見られることは多いですが、これは「首の硬さがあるから同じ向きで寝てしまい、結果として頭が歪む」という可能性が高く、「赤ちゃんの頭の歪みが原因で、将来肩こりが増える」という直接的な因果関係を証明した研究はなく、現時点でははっきり分かっていません。
※これらは「将来絶対に起きない」と断定されたわけではなく、「現時点の研究ではまだはっきり証明されていない」というのが正確な事実です。
結論として、頭の歪みによって生じる主な問題は、「見た目(整容面)」および「耳の位置のズレや噛み合わせ(歯科矯正の必要性)といった骨格的な左右差」が現時点で確認されています。
そのため当院では、将来こういった病気(頭痛や中耳炎など)になります、と不確定な情報で過剰に不安を煽るような説明はいたしません。分かっていること・分かっていないことを正しくお伝えした上で、ご家族が納得して選択できるようサポートいたします。
また、「見た目の問題だから軽視してよい」とも考えておりません。 見た目が重視される現代において、また将来のメガネの掛けやすさや噛み合わせに関わる部分だからこそ、「我が子のために少しでもきれいな形にしてあげたい」と願う親心は、何より尊重されるべき大切な要素だと考えています。
当院の頭のかたち外来では、短頭や斜頭といった寝かせ方など外部からの圧迫による位置的頭蓋変形なのか、病的な変形(頭蓋骨の病気)なのかを正しく鑑別することを大切にしています。
頭蓋骨の縫合線(継ぎ目)が本来より早く固まってしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症」などの病気がないかを診察します。当院ではエコー検査を行い、頭蓋骨縫合早期癒合症の有無を確認します。万が一、病的な変形が疑われる場合は、迅速に提携する高度医療機関(大学病院等)へご紹介いたします。
病的な問題がない場合、外部からの圧力が原因で生じる「位置的頭蓋変形」と診断されます。変形の現れ方によって主に以下の3種に分類されます。
| 変形タイプ | 主な特徴・見た目の印象 | 生じやすい背景 |
|---|---|---|
| 斜頭症 (しゃとうしょう) ![]() |
頭を上から見ると平行四辺形に近く、 耳の位置に左右差が出ることがある |
決まった方向ばかり向く 「向き癖」や斜頸 |
| 短頭症 (たんとうしょう) ![]() |
後頭部全体が平坦で、 いわゆる「絶壁」と呼ばれる状態 |
長時間の仰向け寝 |
| 長頭症 (ちょうとうしょう) ![]() |
頭部が前後に長く伸びている状態 | 側頭部に圧力がかかる姿勢 (NICUでの経過など) |
頭の歪みの多くは見た目の問題(整容面)が中心ですが、重度の変形をそのままにしておくと、成長後に以下のような日常生活での不便さや困りごとにつながる場合があります。
診察結果やお子さまの月齢、変形の度合いに応じて、2つのアプローチ方法からご家族とともに最適な選択肢を決定します。
軽度の歪みや低月齢のお子さまには、日常生活の工夫によるアプローチをアドバイスします。

体位変換(ポジショニング)
授乳や抱っこの向きを左右均等にし、寝かせる際はおもちゃや声かけの位置を工夫します。向き癖の反対側に体を傾ける際は、タオル等を背中に当てて約30度の傾きを保ちます(※安全のため完全な横向き・うつ伏せ寝は避け、保護者の目の届く範囲で行ってください)。
タミータイム(うつ伏せ遊び)
赤ちゃんが起きている間に、保護者の厳重な見守りのもとでうつ伏せの姿勢をとらせます。頭にかかる重力を分散させると同時に、首や背中の筋力発達をサポートします。
ホームケアだけでの改善が難しい場合や、変形が中等度以上と判断された場合には、医療用ヘルメットを用いた矯正治療を選択できます。
治療の仕組み
ヘルメットで頭を締め付けるのではなく、突出している部分の成長を優しく抑え、凹んでいる部分に成長スペースを作ることによって、本来の丸みへ導く治療法です。


治療の適応期間
生後3か月(首すわり以降)〜8か月頃が治療適応期です。特に生後4か月〜6か月の頭蓋骨が柔らかく成長が著しい時期に開始することで、より高い効果が得られます。
当院では、厚生労働省の医療機器承認を取得しているBerry社製「baby band(ベビーバンド)」を採用しています。

3Dスキャンによる
高精度なオーダーメイド
最新の3D撮影データを基に作成。お子さま独自の頭部形状にジャストフィットさせます。
通気性と衛生面のこだわり
汗っかきな赤ちゃんの肌トラブルを防ぐため、通気性の高いクッション構造を採用。クッションパーツは取り外してご自宅で手軽に洗濯が可能です。
豊富なデザイン
13種類以上のバリエーション豊かなカラー・デザインからお好みの一品をお選びいただけます。

専用アプリによる装着管理
毎日の装着時間や経過をアプリで可視化。医師と情報を共有しながら安心して治療を継続できます。

大学病院での研究結果
複数の医療機関で実施されたベビーバンドの臨床研究結果が学術論文として発表されています1)。乳児224名を対象として、ベビーバンドを使用した治療では、中等症、重症、最重症の全ての重症度群で頭の形が改善されたという結果が示されました。
初回診断から治療完了まで、小児科専門医が手厚くフォローします。治療途中で担当医が変わる心配はありません。また、初診時に院内で頭部エコー検査を同日に実施可能で、頭蓋骨縫合早期癒合症などの病的な変形の除外を診断します。エコー検査は被曝もなく、赤ちゃんにご負担がない検査です。
無理にヘルメット治療を勧めたり、決断を急がせたりすることは絶対にありません。客観的な測定データをお示しした上で、ご家族が納得して選択できるようサポートします。
お引越しや環境の変化により、すでに他院でヘルメット治療(baby band)を開始されている方の継続フォロー・診察受け入れにも対応しています。

初回受診・詳細測定
(保険診療)
お電話または公式Web/LINEよりご予約いただけます。
小児科専門医による全身診察およびエコー検査による病因の判定(頭蓋骨縫合早期癒合症などの病的な変形の除外)

※初診時は説明や撮影を含めて約1時間ほどお時間をいただいております。
ヘルメットの発注・お渡し(自由診療をご希望の場合)
定期受診・
フォローアップ
約2週間〜1ヶ月ごとの定期通院。
※皮膚の赤みや肌トラブルが生じた場合は、定期受診を待たずにいつでも診察・処方対応が可能です。
治療完了(卒業)
頭部の丸みが十分に改善された段階で治療完了となります(標準的な装着期間は1日23時間・約3ヶ月〜4ヶ月程度)。
ご家族に安心してお取り組みいただけるよう、明確な総額料金を設定しています。
| 診療区分 | 内容 | 費用(税込) |
|---|---|---|
| 初回診察・測定 |
|
保険診療(実費負担なし) |
| ヘルメット治療一式 |
|
330,000円(自由診療) |
軽度の位置的変形であれば自然に目立たなくなる場合もありますが、中等度〜重度の変形については自然経過のみで正常な丸みまで戻すことは難しいことが分かっています。
無理な圧力を加えて頭の形を締め付ける治療法ではないため、痛みを生じることはありません。最初は違和感から気にする素振りを見せる場合もありますが、多くの赤ちゃんは数日で慣れて普段通り過ごせるようになります。
赤ちゃんは代謝が盛んなため、装着初期は汗による赤みや湿疹が出やすくなります。当院では小児科として適切な皮膚疾患用のお薬(軟膏等)を処方しながら、治療を中断することなくスムーズに継続できるようサポートします。
園側のポリシーによりますが、多くの保育園で装着の継続が可能です。必要に応じて当院より保育園提出用の説明文書や指示書を作成いたします。
当院では、初診時に院内でエコー検査を行い、頭蓋骨縫合早期癒合症の有無を確認します。エコー検査は被曝もなく、赤ちゃんにご負担がない検査ですので、ご安心して受けていただけます。診察とエコー検査の結果、頭蓋骨縫合早期癒合症などの病的な変形が疑われる場合は、迅速に提携する高度医療機関(大学病院等)へご紹介いたします。
はい、可能です。ご転居等で他院からの転院をご希望の場合も柔軟に対応しておりますので、まずは一度ご相談ください。
「あたまの形くらいで、病院に行ってもいいのかな…」そうためらう必要は、まったくありません。
医療機関やインターネットの情報によって「頭の歪みが将来、頭痛や中耳炎の原因になる」と言われることもあれば、「気にしなくて大丈夫」と言われることもあり、「一体何を信じればいいの?」と戸惑われるご家族も多いのではないでしょうか。
現時点の科学的・医学的なデータにおいて言えるのは、以下の事実です。
私たちは、「将来大変な病気になるから」と過剰に不安を煽るような説明はいたしません。客観的で正確な情報をお伝えし、ご家族が納得して選択できるようサポートすることが医療機関の役割だと考えています。
ヘルメット治療には費用や毎日のケアなどのご負担が伴うからこそ、治療を強制することは絶対にありません。 診察・測定の結果、ご家庭でのケア(タミータイムや体位変換)で様子を見ましょうとなることも十分ありますし、病気がないことや今の状態が分かるだけでもご家族の大きな安心につながるはずです。
だからといって、将来の可能性を心配して治療を選択されるご家族のお気持ちを、私たちは決して否定いたしません。「少しでも不安の種をなくしてあげたい」「我が子のためにできる限りのことをしてあげたい」という願いは、何より尊重されるべき温かい親心だからです。
もしヘルメット治療を選ぶことになっても、それは病気の印ではなく「お子さまの将来のためにご家族が向き合い、選んだ愛の証」です。卒業の日を迎えたとき、整った頭の形とともに家族で話し合い、乗り越えたという確固たる時間が、これからの子育ての力になります。
「まずは相談だけ」「今の頭の形を試しに客観的に測ってみたい」「選択肢を整理するための判断材料がほしい」というご受診を心より歓迎しております。どうかお一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
1.Nagano, N, et al., “Therapeutic Effectiveness of a Novel Cranial Remolding Helmet (baby band2) for Positional Plagiocephaly: A Multicenter Clinical Observational Study.” Journal of Clinical Medicine, 2024, 13(19), 5952. doi:10.3390/jcm13195952
PAGETOP