2026年8月19日

こんにちは、withこどもクリニック院長の安原潤です!
小児科医として診療していると、「もう少し早く気づけていたら防げたかもしれない」と感じる場面があります。
休日に公園へ行けば、子どもたちは夢中で走り回ります。親としては「そろそろ休憩しよう」「お茶を飲もう」と声をかけるのですが、「まだ遊ぶ!」「全然大丈夫!」と返ってくることもしばしばです。
きっと多くの親御さんも同じではないでしょうか。
子どもは楽しいことに夢中になると、自分の体の変化に気づきにくくなります。そして小さな子どもほど、「暑い」「気持ち悪い」「頭が痛い」といった不調を上手に言葉にできません。
だからこそ熱中症対策で大切なのは、体温計の数字や気温だけではなく、「いつもと違う様子」に大人が気づいてあげることです。
今回は、小児科医として、子どもの熱中症についてお伝えしたいと思います。
なぜ子どもは熱中症になりやすいの?
「子どもは熱中症に注意しましょう」とよく言われますが、実は子どもの体には大人とは違う特徴があります。
まず、子どもは体が小さい一方で、体重に対する皮膚の面積が大きく、周囲の暑さの影響を受けやすい特徴があります。
また、汗をかいて体温を下げる機能もまだ発達途中です。大人なら汗をかいて熱を逃がせる場面でも、子どもはうまく体温を下げられないことがあります。
さらに、子どもの目線は大人よりずっと低い位置にあります。
真夏のアスファルトは強い照り返しによって高温になっています。大人が「今日はそこまで暑くないかな」と感じる日でも、地面に近い子どもたちは想像以上の暑さにさらされていることがあります。
特にベビーカーに乗っている赤ちゃんは要注意です。
風が当たりにくく、地面からの熱も受けやすいため、大人が感じている以上に過酷な環境になっていることがあります。
子どもは「熱中症です」と教えてくれない
熱中症で最も大切なのは、早く気づくことです。
しかし、子どもは大人のように症状を説明できません。
実際には、
・なんとなく機嫌が悪い
・抱っこを求める
・急に遊ばなくなる
・ぼーっとしている
・普段より反応が鈍い
といった変化として現れることがあります。
私自身も子どもたちと出かけたとき、「急に静かになったな」と思ったら、かなり疲れていたという経験があります。
熱中症の初期サインは、「ぐったりする」よりも前の段階にあります。
だからこそ、
「今日はいつもより元気がないな」
という親の直感を大切にしてほしいと思います。
こんな症状があったら注意
熱中症では次のような症状がみられます。
初期症状
・顔が赤い
・大量の汗をかいている
・めまい
・立ちくらみ
・足がつる
・元気がない
・不機嫌になる
進行した症状
・頭痛
・吐き気
・嘔吐
・強いだるさ
・ぐったりしている
・水分が飲めない
緊急性が高い症状
・呼びかけへの反応が悪い
・意識がもうろうとしている
・けいれんしている
・自力で立てない
・水分が飲めない
・異常に体が熱い
こうした症状がある場合は、ためらわず医療機関を受診し、必要に応じて救急要請を検討してください。
熱中症かな?と思ったら
もし熱中症が疑われたら、まずは体を冷やすことが最優先です。
① 涼しい場所へ移動する
エアコンの効いた室内や日陰へ移動しましょう。
まずは暑さから離れることが重要です。
② 衣服をゆるめる
帽子や上着を外し、風通しを良くします。
③ 効率よく体を冷やす
保冷剤や冷たいタオルを、
・首
・わきの下
・足の付け根
に当てます。
大きな血管が通る場所なので、効率よく体温を下げることができます。
④ 水分と塩分を補給する
意識がしっかりしていて飲める場合は、
・水
・麦茶
・スポーツドリンク
・経口補水液
などを少しずつ飲ませましょう。
一気に飲ませると吐いてしまうことがあるため、少量ずつが基本です。
なお、意識が悪い場合は無理に飲ませないでください。
解熱剤は効くの?
「熱が高いので解熱剤を使った方がいいですか?」
という質問をよくいただきます。
熱中症の高体温は、風邪やインフルエンザの発熱とは仕組みが違います。
そのため、アセトアミノフェンなどの解熱剤を使っても十分な効果は期待できません。
熱中症で大切なのは、
・体を冷やすこと
・水分と塩分を補給すること
です。
まずは冷却を優先しましょう。
家庭でできる熱中症予防
「のどが渇く前」に飲む
熱中症予防の基本は水分補給です。
ただし、「のどが渇いた」と感じた時点で、すでに軽い脱水が始まっていることがあります。
遊びや運動の途中でも、定期的に飲む習慣を作りましょう。
睡眠不足に注意する
意外に思われるかもしれませんが、睡眠不足は熱中症のリスクを高めます。
寝不足の日は体温調節がうまく働きません。
夏休み中も生活リズムを大切にしましょう。
朝ごはんを食べる
朝食は水分や塩分を補給する大切な機会です。
朝食抜きで外出すると熱中症のリスクが高まります。
エアコンを上手に使う
近年の日本の夏は、気合いや根性で乗り切れる暑さではありません。
室温だけでなく湿度にも注意しながら、エアコンや除湿機能を活用しましょう。
車内に子どもを残さない
「ほんの数分だから」
そう思っていても、車内温度は急激に上昇します。
毎年悲しい事故が繰り返されています。
短時間でも子どもだけを車内に残さないようにしましょう。
おわりに
熱中症は、特別な場所で起こる病気ではありません。
公園で遊んでいるときかもしれませんし、通園や通学の途中かもしれません。あるいは、自宅でお昼寝をしている間かもしれません。
私自身、5人の子どもを育てる中で、「もっと早く休憩させればよかったな」「もう少し早くお茶を飲ませればよかったな」と反省することがあります。
子育てに完璧はありません。
だからこそ大切なのは、熱中症を恐れすぎることではなく、お子さんの小さな変化に気づいてあげることだと思います。
「今日は少し顔が赤いな」
「なんだか元気がないな」
そんな小さなサインを見逃さず、少し早めに休憩する。
それだけでも、多くの熱中症は防ぐことができます。
子どもは、自分では気づけないことがあります。
だからこそ私たち大人が、少しだけ先回りして守ってあげたいですね。
今年の夏も、お子さんたちが元気いっぱいに過ごせることを願っています。
