赤ちゃんの「安全な眠り」のために――乳幼児突然死症候群(SIDS)を知っていますか?withこどもクリニック 武蔵小杉365日診療の小児科・アレルギー科親と子の、今日を支える。

〒211-0065神奈川県川崎市中原区今井仲町4-1

044-711-2224

WEB予約 WEB問診
院内写真

赤ちゃんの「安全な眠り」のために――乳幼児突然死症候群(SIDS)を知っていますか?

赤ちゃんの「安全な眠り」のために――乳幼児突然死症候群(SIDS)を知っていますか?withこどもクリニック 武蔵小杉365日診療の小児科・アレルギー科親と子の、今日を支える。

2026年8月16日

赤ちゃんの「安全な眠り」のために――乳幼児突然死症候群(SIDS)を知っていますか?

夜中、赤ちゃんの呼吸を確認してしまうこと

こんにちは!withこどもクリニック院長の安原潤です。

夜中にふと目が覚めて、隣で眠っている赤ちゃんの胸がちゃんと上下しているか、そっと確認したことはありませんか。

私は小児科医として診療する一方で、これまで自分の子どもたちを育ててきましたが、それでも乳児期には、寝ている我が子の顔をのぞき込み、「ちゃんと息をしているかな」と確認してしまうことがあります。

小児科医である私でもそうなのですから、初めて赤ちゃんを育てるお父さん、お母さんが不安になるのは当然のことだと思います。

そして、その不安には理由があります。

小児科医としてこれまで診療する中で、それまで元気だった赤ちゃんが突然心肺停止となり、救急搬送されてくる場面に立ち会ったことがあります。

医療スタッフが懸命に蘇生を行っても、救うことができないことがあります。

昨日まで元気だった赤ちゃんが、突然いなくなってしまう。

ご家族にとって、これほどつらい出来事はありません。

医師になったばかりの頃は、そうした出来事を「医療者として」受け止めていました。

でも、自分自身が父親になり、そのご家族の悲しみを以前よりずっと身近に感じるようになりました。

だからこそ、私は小児科医として、そして一人の父親として、赤ちゃんの睡眠について知っておいてほしいことがあります。

それが、乳幼児突然死症候群(SIDS)と安全な睡眠環境についてです。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?

乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:SIDS)とは、それまで健康だった赤ちゃんが、主に睡眠中に突然亡くなり、詳しく調べても原因を特定できない病気です。

窒息、感染症、先天性心疾患など、明らかな原因が見つかる死亡とは区別されます。

SIDSは乳児期、特に生後1〜4か月頃に多く、90%以上が生後6か月までに発生するとされています。ただし、1歳になるまでは起こる可能性があるため、安全な睡眠環境を続けることが大切です。

日本でもSIDSは決して過去の病気ではありません。

2024年には、日本で55人の0歳児がSIDSで亡くなっています。0歳児の死因としても上位に位置しています。

もちろん、SIDSそのものは頻度の高い病気ではありません。

それでも、赤ちゃんの命を守るために私たちができることがあるのであれば、その方法を知っておく価値は十分にあります。

なぜSIDSは起こるのでしょうか?

SIDSがなぜ起こるのか、その原因は現在も完全には分かっていません。

一つの原因で起こるというよりも、

・赤ちゃん自身が持っている生まれつきの要因
・呼吸や自律神経などが発達途中にある時期
・睡眠環境などの外的な要因

こうした複数の要素が重なった時に起こるのではないかと考えられています。

ここで大切なのは、

赤ちゃん自身の要因や月齢は変えられなくても、睡眠環境は私たちの手で変えられる

ということです。

だからこそ、SIDSを必要以上に怖がるのではなく、「できる対策を知っておく」ことが大切です。

「赤ちゃんは仰向けで寝かせる」が世界の基本になった理由

今では「赤ちゃんは仰向けで寝かせる」というのが当たり前になっています。

しかし、実は昔からそうだったわけではありません。

1990年代以前には、吐き戻しなどを心配して、うつ伏せ寝や横向き寝が勧められていた時代もありました。

その後の研究によって、うつ伏せ寝がSIDSのリスクを高めることが分かり、世界各国で「赤ちゃんは仰向けで寝かせる」という考え方が広がっていきました。

アメリカでは「Back to Sleep」というキャンペーンが行われ、その後「Safe to Sleep」へと発展しています。

現在も、仰向け寝はSIDSや睡眠関連死のリスクを下げるために最も重要な対策の一つとされています。

アメリカとオーストラリアで子育てをして感じたこと

私はアメリカで約4年半、オーストラリアで約2年間生活し、現地で子育ても経験しました。

そこで日本との違いとして印象に残ったことの一つが、「Safe Sleep(安全な睡眠)」についての教育が非常に繰り返し行われていることです。

産院で説明され、ポスターが貼られ、健診でも確認される。

そして、伝えられる内容は決して難しいものではありません。

「赤ちゃんは仰向けで寝かせる」

「寝床には柔らかいものを置かない」

「赤ちゃんは親と同じ部屋で、別の寝床で寝かせる」

こうしたシンプルなメッセージを、何度も繰り返します。

その結果、「赤ちゃんはこうやって寝かせるもの」という認識が、医療者だけでなく社会全体に浸透しているように感じました。

日本でも啓発は進んでいますが、まだ「SIDSという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何をすればいいのか分からない」という方も少なくありません。

だからこそ、ここからはご家庭で実践できることを具体的にお伝えします。

今日からできる「安全な睡眠」のポイント

① 寝かせる時は、いつも「仰向け」

Safe to sleep campaign ホームページより

昼寝でも夜でも、赤ちゃんを寝かせる時は仰向けにしましょう。

うつ伏せ寝や横向き寝は、SIDSのリスクを高めます。

「少しだけなら大丈夫」と考えず、眠りにつかせる時は毎回仰向けが基本です。

なお、自分で「仰向け→うつ伏せ」「うつ伏せ→仰向け」の両方ができるようになった赤ちゃんが、自分で寝返りをした場合は、無理に一晩中戻し続ける必要はありません。

大切なのは、最初に寝かせる時は仰向けにすることです。

② 寝床は「硬く、平らに、シンプルに」

Safe to sleep campaign ホームページより

赤ちゃんの寝床は、硬く、平らなものを選びましょう。

柔らかいマットレス、ソファ、クッションなどは、顔が沈み込んだり、体が挟まったりして、窒息につながる危険があります。

また、傾斜のついた寝床も安全とはいえません。

基本は、

硬く、平らな寝床+フィットしたシーツだけ。

これくらいシンプルに考えてください。

③ 枕・ぬいぐるみ・毛布などを寝床に置かない

大人から見ると、枕やぬいぐるみ、ふわふわの毛布は「赤ちゃんが喜びそう」「気持ちよく眠れそう」と思うかもしれません。

しかし、赤ちゃんの睡眠環境では、こうした柔らかいものが危険になることがあります。

枕、クッション、ぬいぐるみ、掛け布団、厚手の毛布などは、赤ちゃんの寝床に置かないようにしましょう。

④ 「親と同じ部屋」で「別の寝床」が理想

Safe to sleep campaign ホームページより

赤ちゃんは、少なくとも生後6か月頃までは、親と同じ部屋で寝ることが推奨されています。

ただし、

同じ部屋で寝ることと、同じベッドで寝ることは別です。

赤ちゃんはベビーベッドなど、赤ちゃん専用の寝床で寝かせるのが基本です。

親と同室で、赤ちゃんは別の寝床。

これが安全な睡眠環境の基本です。

⑤ 添い寝をしてしまったら、自分を責めない

夜中の授乳や寝かしつけの途中で、親がうっかり眠ってしまうことはあります。

大切なのは、「絶対に添い寝をしてはいけない」と自分を責めることではありません。

もし授乳中などに寝落ちしてしまったら、目が覚めた時点で赤ちゃんを自分の寝床に戻してあげましょう。

特にソファや肘掛け椅子で赤ちゃんと一緒に眠ることは非常に危険です。

また、飲酒後、強い疲労がある時、眠くなる薬を使用している時、赤ちゃんが生後4か月未満の場合などは、同じ寝床で寝ることのリスクがさらに高くなります。

⑥ 赤ちゃんを「温めすぎない」

赤ちゃんは寒くないように、とつい厚着をさせたくなります。

しかし、温めすぎも安全な睡眠の観点からは避ける必要があります。

厚着をさせすぎたり、寝具を重ねすぎたりせず、室温に合わせて調整しましょう。汗をかいている、胸や背中が熱いなどの場合は、着せすぎていないか確認してください。

⑦ たばこの煙を避ける

妊娠中の喫煙はSIDSの重要なリスク因子です。

また、出生後の受動喫煙も避ける必要があります。

「家の中では吸っていないから大丈夫」と思っていても、赤ちゃんを取り巻く環境全体からできるだけ煙を遠ざけることが大切です。

⑧ 母乳育児はSIDSのリスクを下げる

母乳で育てられている赤ちゃんでは、SIDSのリスクが低いことが分かっています。

ただし、ここで強調したいことがあります。

「母乳でなければいけない」という意味ではありません。

母乳が思うように出ないこともあります。

仕事や体調など、さまざまな事情があります。

ミルクを使うことに罪悪感を持つ必要はありません。

SIDS予防のために大切なのは、母乳かミルクかだけではなく、全体として安全な睡眠環境を整えることです。

⑨ 起きている時は「うつぶせ遊び」を

「うつ伏せ寝は危険」と聞くと、うつ伏せそのものを避けたくなるかもしれません。

でも、起きている時間のうつ伏せ遊びは別です。

保護者が見守っている状態で行う「Tummy Time」は、首や肩などの筋肉の発達を促す大切な時間です。

つまり、

起きている時のうつ伏せ遊びはOK。
眠る時は仰向け。

この区別を覚えておいてください。

⑩ 家庭用のモニターがSIDSを防ぐわけではありません

「赤ちゃんが呼吸しているか心配だから、無呼吸モニターを買った方がいいですか?」

外来でも時々聞かれる質問です。

市販の家庭用心肺モニターを使用することで、SIDSを予防できるという根拠はありません。

機械をつけているから安心、ではなく、

安全な睡眠環境を整えることが何より大切です。

もちろん、医学的な理由から医師がモニターを必要と判断するケースは別です。

「全部できないとダメ」と思わないでください

ここまで読むと、

「やることが多いな」

と感じる方もいるかもしれません。

でも、私は親御さんに「完璧にしてください」と伝えたいわけではありません。

育児は教科書通りにはいきません。

夜中の授乳中に寝落ちしてしまうこともある。

赤ちゃんが泣き続けて、どうしても抱っこしたまま眠ってしまうこともある。

母乳が思うように出ないこともある。

大切なのは、100点満点を取ることではありません。

「知っていること」が、いざという時の行動を変えます。

まずは、

仰向けで寝かせる。
硬く平らな寝床を使う。
寝床に柔らかいものを置かない。
赤ちゃんは自分の寝床で寝かせる。
たばこの煙を避ける。

このあたりから始めてみてください。

おわりに――「知ること」は、赤ちゃんを守ること

私は小児科医として、突然大切な赤ちゃんを失ったご家族の悲しみに触れてきました。

小児科医として知識を持っていても、親になれば本当に不安になることがあります。

赤ちゃんが眠っていると、「ちゃんと息をしているかな」と顔をのぞき込みたくなります。

それは、赤ちゃんを大切に、愛おしく思っているからこその自然な気持ちです。

SIDSをゼロにする方法は、残念ながら今の医学にはありません。

だからこそ、必要以上に恐れるのではなく、今分かっていることを知り、できる対策を一つずつ積み重ねることが大切です。

アメリカやオーストラリアで子育てを経験して感じたのは、安全な睡眠について「知っていること」が、特別な医学知識ではなく、子育ての当たり前の一部になっていることでした。

日本でも、もっと多くのご家族にこの知識が届いて欲しいと願っています。

そして、「赤ちゃんが寝ているだけなのに心配で仕方がない」という親御さんの不安が、少しでも「できることはやっている」という安心に変わってほしい。

そんな想いを込めて、このコラムを届けます。

親御さんが安心して、赤ちゃんの今日に向き合えるように。

withこどもクリニックは、365日、親と子の今日を支えていきます。

参考文献・参考情報

1. Moon RY, Carlin RF, Hand I; AAP Task Force on Sudden Infant Death Syndrome. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics. 2022;150(1). doi:10.1542/peds.2022-057990.
2. Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development (NICHD). Safe to Sleep®: Ways to Reduce Baby’s Risk.
3. Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development (NICHD). Safe to Sleep®: Frequently Asked Questions.
4. Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development (NICHD). Safe Sleep Environment.
5. Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development (NICHD). Known Risk Factors for SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths.
6. 厚生労働省.令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況.
7. こども家庭庁.こどもの不慮の事故の発生傾向と事故防止に向けた取組等.

PAGETOP